本研究の目的は対数曲線の有理点・整数点を求めるアルゴリズムの研究である。本年度は、一般種数の超楕円曲線から定まるヤコビ多様体について研究を行った。 複素数体上では、一般種数の超楕円曲線のヤコビ多様体に対して、ワイエルシュトラスの楕円関数を拡張した超楕円関数が100年以上前に構成されているが、近年その研究が進み、具体的な計算に利用できるようになってきている。 本研究において、有理点の数論的な複雑さを測る高さ関数が重要な役割を担っているが、これは各素点ごとに定まる局所高さ関数に分解できる。このうち、無限素点に対応する局所高さ関数はテータ関数を使って具体的に表示できることが知られているが、本年度の研究において、この局所高さ関数を超楕円シグマ関数を用いて具体的に表すことができた。 また、楕円曲線の理論において、ねじれ点の座標を根に持つ等分多項式が定義されており、ねじれ点の計算などに応用が可能である。この等分多項式は種数2の曲線のヤコビ多様体の場合にも拡張されていたが、これを超楕円シグマ関数を用いて一般種数の超楕円曲線のヤコビ多様体の場合に拡張することができた。これはヤコビ多様体のねじれ点の研究に役立つと思われる。 さらに、上述した無限素点に対する局所高さ関数と、ヤコビ多様体上のm倍写像との関係について、等分多項式を使って具体的に記述することができた。これは楕円曲線などの場合にすでに知られている結果の拡張になっている。
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