初年度は、地球のマントル対流の規模を地球化学的な手法で明らかにするため、コアーマントル相互作用をタングステン同位体比トレーサーから、主に南ポリネシア諸島のラロトンガ島、ツバイ島、マンガイア島、ルルツ島について検証した。またこれらの地域以外にハワイ島、オントンジャワ海台の試料のタングステン濃度と同位体比を測定し、検証した。 南ポリネシア諸島のタングステン同位体比からは、マントルが外核近くから上昇しているという証拠であるコアーマントル相互作用を明確に示す試料は見つけられなかった。南ポリネシア諸島の約30データ(21試料)から系統的に得られたタングステン濃度と同位体比の関係から、0.6%以下のコア物質の寄与の可能性があることを示すことができた。この結果は国際学会で発表し、国際学会雑誌に投稿中である。 さらにこのような議論を行うためにはより、精度のよいタングステン同位体比測定を行う必要があり、1つの試料複数回測定することで、誤差をより小さくすることにした。また初年度中に明らかになった問題点として、これまでマントルを代表すると考えられてきたタングステン同位体比が1997年に発表された1データのみであり、より精度の良い方法で再測定と追加測定をする必要があることがわかった。しかし、マントルを代表すると考えられる地球岩石には、これまで測定してきた岩石より100分の1程度低いタングステン濃度しか含まれておらず、今まで用いてきた方法では測定できないことがわかった。そこで初年度後半から新たな方法を開発している。
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