研究概要 |
2年度は,地球のマントル対流の規模を地球化学的な手法および鉱物科学的な手法で明らかにするため,南アフリカキンバライトやセントヘレナ火山などのタングステン同位体比を測定し、また、マントル鉱物多結晶体中の金属元素拡散速度について実験を行った。 南アフリカキンバライトやセントヘレナ火山を含む5地域から得た岩石試料中のタングステン同位体比からは、マントルが外核近くから上昇しているという証拠であるコア-マントル相互作用を明確に示す試料は見つけられなかった。初年度に行った、南ポリネシア諸島のタングステン同位体比とタングステン濃度からはコア物質の影響が最大でも0.5%であることがわかり、地殻物質の混合の影響などの考察をまとめた論文は国際学術雑誌に掲載された。またタングステンなどの微量元素を測定する際の岩石粉砕中に生じるコンタミネーションを見積もり、非常に低いタングステン濃度をもつ試料や粘土層など試料には人工石英瑪瑙乳鉢を用いた。この結果はまとめて国際学術雑誌に採択が決定した。 鉱物科学的な視点からは、マントル鉱物多結晶体中のタングステンやプラチナの拡散速度を求める実験を行った。まずマントル鉱物多結晶体を合成し、最適な拡散源(合金・薬品・薄膜・蒸着)を模索した。多結晶体表面の状態などを観察した結果、薬品ベースか蒸着ベースが最適と考え今後の実験に用いることにした。
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