研究課題
本研究「19世紀末-20世紀前半期南アフリカのブリティッシュ・アイデンティティ」は、ヨーロッパとの連関の叙述自体を「西洋中心主義」として排除するポスト・アパルトヘイトの南アフリカ史研究を見直し、植民地支配の本質的理解に迫ろうとする。2006年度までは、「世紀転換期イギリス系入植者のアイデンティティ」を中心に研究を進めてきたが、2007年度よりは1920年代以降、アフリカーナ(オランダ系入植者、ボーア人)・ナショナリストの政権獲得に抗して登場したイギリス系のリベラル派(の歴史家)と「記憶」の関係に対象を移している。本年度はその2年目であり、(1)真実和解委員会、第2次南アフリカ戦争100周年などの現状をふまえて、記憶に関する南アフリカ史研究の動向を更に整理し、(2)19世紀前半、南部アフリカのアフリカ人社会が経験した一連の大変化(「ムフェカネ」)を巡る20世紀前半期ブリティッシュ・リベラリズムの記憶について研究を進め、(3)世紀転換期イギリス系入植者のアイデンティティと20世紀前半期ブリティッシュ・リベラリズムの関係について、『ケープ・タイムズ』紙を巡って更に研究を進めた。(1)、(2)については、「ムフェカネ」の記憶に関する学会発表を行い、歴史家W・M・マクミランに関する論説を執筆した。また(3)に関連して、19世紀末ケープ植民地のブリティッシュ・アイデンティティについての英語論説を執筆した。他方学会コメントでは、アメリカと南アフリカのネイション・ビルディングについて比較を試みた。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
歴史研究(大阪教育大学歴史学研究室) 46
ページ: 1-27
Zinbun (Institute for Research in Humanities, Kyoto University) 41
ページ: 21-44