再投稿中のエゾアカヤマアリの論文に加えた追加データ取得のため、まず、スーパーコロニー内の複数巣由来のアリ個体を対象に行動実験、および電気生理学的実験を行った。その結果、スーパーコロニー内の巣間で、行動実験、および電気生理学的実験における結果は差が見られず本研究が、巣固有の特性ではなく、エゾアカヤマアリの種としての特性を表わしている事を強く示唆した。次に、敵対行動を引き起こす体表炭化水素(CHC)の濃度の影響を調べた。8、0.8、0.08、0.008匹等頭量の精精したCHCをガラスビーズに塗布し、そのガラスビーズに対する行動を観察した。その結果、エゾアカヤマアリは巣仲間のCHCに比べ、スーパーコロニー外の同種個体のCHCに対して10倍、異種のアリのCHCに対して100倍の感度で攻撃または逃避行動を取ることが明らかになった。これは、エゾアカヤマアリの同種のCHCに対する感度の鈍さを示した。さらに、頭部から切り離した触角を用いた電気生理学的実験を行った。電気生理学的実験の結果として得られる電気的応答記録は脳を取り除いた頭部をつけた触角を用いた実験結果と遜色なく、電気的応答記録が感覚細胞由来であって、脳由来ではないと証明できた。最後に、電気的応答記録は新しく開発されたソフトを用いてソーティングを行い、刺激液として用いるCHCの差異と電気的応答の関係を明らかにした。巣仲間、スーパーコロニー仲間、非スーパーコロニー仲間、異種のCHCsと自己のCHCsから相違が大きくなるに従い、電気的応答の種類が増加する傾向が見られた。以上の結果を加え、現在、再々投稿中である。 研究室での飼育体制を整えたアルゼンチンアリを用いて、神戸市に侵入したアルゼンチンを飼育および室内での行動実験を行い、アルゼンチンアリの高濃度の巣仲間のCHCsがアルゼンチンアリの行動を大きく変化させることを明らかにした。電気生理実験にはアルゼンチンアリの触角のみを用いた方法で行うめどがつき、本春、野外のアリの出現を待って、本格的な実験の再開となる予定である。
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