研究概要 |
網膜幹細胞未分化性維持の分子機構の解明を目的とし研究実施計画に則し以下の研究を行った結果、計画通りの研究成果が得られた。 (1)網膜幹細胞におけるWntシグナルの解析 これまでの研究成果からWntシグナルは哺乳類網膜幹細胞において分化抑制的な機能を持っていることが示唆されていた。この分子機構1の解析としてWnt受容細胞と考えられるSSEA1陽性未熟辺縁部網膜前駆細胞におけるWntシグナル関連遺伝子の発現をDNAマイクロアレイを用いて解析した。その結果、WntシグナルのTargets遺伝子としCyclinD1,c-myc,id2といった遺伝子の発現が上昇していた。中でもid2は大腸癌などで分化抑制的な機能を示すことが知られていることから、網膜幹細胞においても同様の分化抑制の分子機構が存在することが考えられる。 (2)Chx10遺伝子の網膜幹細胞特異的発現制御領域と上流因子の決定 同定したChx10遺伝子網膜幹細胞特異的制御領域結合タンパク質を質量分析にて解析を行った。その結果、上流因子の候補としてNPM1などの遺伝子を同定した。これらのzebrafish相同遺伝子は網膜発生過程及び、CMZの網膜幹細胞で強く発現する。またNPM1遺伝子欠損マウスでは眼球の形成が見られないことからこれらの遺伝子がChx10遺伝子の網膜幹細胞特異的発現制御に寄与する可能性が考えられる。 (3)幹細胞マーカーを用いた毛様体由来網膜幹細胞の同定 これまで成体マウス毛様体組織においてCD133などの細胞表面抗原が発現していることを報告していたが、毛様体由来網膜幹細胞においてCD133の発現を確認した。また、成体マウス毛様体組織におけるCD133陽性細胞の局在に関して免疫染色、電子顕微鏡による解析を行った結果、CD133陽性細胞は毛様体色素上皮細胞であることが考えられる。
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