研究概要 |
今年度は,四次元開多様体上の無限エネルギーゲージ理論について,昨年度に引き続き,研究した. 昨年度はRunge近似定理のゲージ理論での類似(インスタントン近似定理)を定式化して証明した.Runge近似定理とは有理型函数の有理関数による近似定理のことであり,有理型函数と有理関数のゲージ理論での類似は反自己双対接続とインスタントンである.さて,インスタントン近似定理とは,(エネルギーが無限かもしれない)反自己双対接続のインスタントンによる近似定理のことである. 今年度は,インスタントン近似定理を深化させ,ゲージ理論におけるモジュライ空間の幾何学に応用した.具体的には次のような定理を証明した: 三次元球面と一次元Euclid空間の直積である四次元開多様体の上で,その曲率の各点ノルムの最大値が一様に抑えられているような反自己双対接続のゲージ同値類がなすモジュライ空間にコンパクトー様収束位相を入れたものを考える. このモジュライ空間は,コンパクト距離化可能空間であり,無限巡回群が自然に作用する. このとき, 定理:このモジュライ空間の巡回群作用についての平均次元は有限である. 平均次元とは「無限次元空間の次元」である. これは,M.Gromovにより1999年に導入された不変量であり,従順群の連続作用を持つコンパクト距離化可能空間に対して定義され,0以上の実数か無限に値をとる. この定理の証明にはインスタントン近似定理を本質的に用いる.
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