本年度は、キノコシロアリとリター層微生物による枯死植物分解量の季節変化を明らかにすることを目的とし、2007年10-11月(乾季の初め)と2008年1-2月(乾季の終わり)に東北タイにあるサケラート環境研究所内の乾燥常緑樹林において、2種のMacrotermes属キノコシロアリが塚内につくる菌園の現存量と土壌中に営巣するキノコシロアリがつくる菌園の現存量に関する野外調査、また菌園サンプルから放出される二酸化炭素量の詳細な測定および林床のリター層の二酸化炭素放出量の測定を行った。二酸化炭素放出量の測定には赤外線CO_2分析計を組み込んだ屋外携帯型呼吸測定システムを用いた。 調査を行った期間に関しては、Macrotermes属キノコシロアリの塚当たり菌園現存量には有意な差は検出されなかったが、塚内に貯蔵されているリター片量は明らかに乾季の終わりに増加していた。土壌中の菌園現存量に関しては、乾季の終わりに単位面積当たりの平均菌園数および平均菌園現存量が増加していた。菌園サンプルの呼吸量は一般に気温に依存することが知られているが、菌園の分解段階の異なる部分間でも呼吸量が大きくことなることが明らかになった。一方、林床のリターサンプルから放出される呼吸量は、全体としては含水量に反比例して減少することがわかり、乾季の終わりの方が平均的に少なくなっていた。興味深いことに、降雨により一時的に含水量が上昇すると、乾季の終わりでは呼吸量が著しい増大が観察された。次年度は、年間を通した季節変化を検証するために、雨季に関するデータ収集を中心に行う予定である。
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