研究概要 |
昨年度に引き続き本年度も、リター層微生物とキノコシロアリによる枯死植物分解量の季節変化を明らかにすることを目的とし、2008年9-11月と2008年1月,3月の合計3回,東北タイにあるサケラート環境研究ステーション内の熱帯季節林(乾燥常緑樹林)において,林床のリター層の二酸化炭素放出量の測定と土壌中に営巣するキノコシロアリがつくる菌園の現存量に関する野外調査を行った。リター層微生物の枯死植物分解活性(呼吸速度)はこれまでに計3回の調査を行った.データは解析中ではあるが,リター層微生物による枯死植物分解は明瞭な季節変化を示すことが明らかとなると同時に,この季節変化には雨量(=リターの含水量)が大きく影響していることわかってきた.リター層微生物による雨量の少ない時期(乾季:2008年1-2月)の分解量の減少は,熱帯季節林全体での分解量が,乾季のない熱帯多雨林よりも少なくなることを示唆するものである.これに対し,こちらもデータの解析中ではあるものの,分解者として重要であるキノコシロアリの菌園が乾季に増加することを示唆するデータも得られつつある.本研究課題の1つの仮説と矛盾するものではなく,これらのデータに基づき次年度は計画通りタイ北部の山地常緑樹林(キノコシロアリの現存量が少ない)やマレーシアの熱帯多雨林における調査を計画している.最終的にはリター層微生物の分解活性の季節変化とキノコシロアリがどのように分解過程全体に影響するかを明らかにすることを目指す.
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