研究課題
本研究では、ガン細胞における多剤耐性の要因として注目されてきたABCG2を膜タンパク質のモデルとして、糖鎖付加、ジスルフィド結合、ユビキチン化に代表される翻訳後修飾とタンパク質の品質管理、細胞内安定性との関係を解明し、それを制御する分子プローブを設計することを目的としている。初年度となる本年度は以下の3点に焦点をあてた。ABCG2タンパク質における糖鎖付加の意義の検討ABCG2はAsn596残基においてN結合型糖鎖付加を受ける。このAsn596残基をGln残基に置換し、糖鎖付加が起こらないような変異型ABCG2発現細胞を構築し、糖鎖付加の意義の検討を行った。ABCG2の成熟化機構の解明タンパク質の成熟化において、ABCG2の糖鎖付加は複数のステップを経て進行すると考えられる。そこで、それぞれのステップに特異的な阻害剤をABCG2発現細胞に作用させ、その発現量の検討を行った。以上の2つの結果よりABCG2において糖鎖付加は、タンパク質として成熟か未成熟かを決定する1つの要因であることが示唆された。ABCG2タンパク質の品質管理と分解経路機構ABCG2タンパク質の第3番目の細胞外ループに存在するCys603は、二量体形成に関与することが報告されているが、同じループ上にはさらに2つのCys残基が存在する。それらは、 ABCG2のタンパク質としての安定性を維持する上で重要であり、それらのCys残基が欠損することにより、分子内S-S結合が形成されないために構造が不安定化し、未成熟タンパク質として分解されてしまうと考えられる。そこで、2種類のタンパク質分解経路阻害剤を用いて、その仮説の検討を行った結果、ABCG2が成熟化タンパク質として認識されるためには、分子内S-S結合が重要であることが示唆された。(Wakabayashi et al.J.Biol.Chem.2007)
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