研究課題
ヒトの小腸に発現しているABCG2は生体異物の体内侵入を阻止する防御システムの1つである。植物性クロロフィルの代謝物フェオフォルバイドaが小腸から吸収されて血液循環系に侵入すると光線過敏症の症状を引き起こすが、正常人ではABCG2がその侵入に対する防御機能を果たしている。フェオフォルバイドaとABCG2を阻害する化合物とを同時に摂取した場合、光線過敏症のリスクが高まると考えられる。本研究では、ABCG2と光線過敏症の因果関係の解明と光線過敏症のリスクを予測するシステムの確立を目的としている。当該年度は、ABCG2の輸送阻害スクリーニング系及び光毒性アッセイ系の確立を行った。Sf9細胞膜ベジクルを用いたポルフィリン輸送阻害スクリーニング系まず、ABCG2のポルフィリン輸送阻害スクリーニング系を開発した。ヒトABCG2を発現させたSf9昆虫細胞から形質膜ベジクルを調整し、ABCG2依存のポルフィリン輸送量を測定した。測定の結果、イマチニブ、ケルセチン、ノボビオシンはABCG2のポルフィリン輸送を強く阻害した。哺乳類細胞を用いた光毒性アッセイ系次に、ポルフィリン輸送を強く阻害した化合物の光毒性を細胞レベルで検証するため、哺乳類細胞を用いたアッセイ系を構築した。ABCG2発現HEK293細胞にフェオフォルバイドaを添加して暗室で培養し、光を照射した。細胞生存率はMTTアッセイにより評価した。ABCG2発現細胞はフェオフォルバイドa依存の光毒性に耐性を示したが、イマチニブ、ノボビオシン存在下では光感受性が有意に増強した。イマチニブとノボビオシンはそれ自体では光毒性を示さないが、ABCG2を阻害することにより結果的に光線過敏のリスクを上昇させることが示唆された(Drug Metab Pharmacokinet,22(6),428-440,2007)。
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