リンパ管新生および分化におけるマスター転写因子Prox1の機能を調節する因子の同定を目的としてyeast two-hybrid screeningを行いProx1の結合因子を探索し、候補因子から11種の核内局在因子に絞り込んだ。さらにHUVEC(ヒト膀帯静脈内皮細胞)およびHDLEC(ヒト皮膚由来リンパ管内皮細胞)でのmRNAの発現をRT-PCR法により確認した。また、哺乳細胞内でProx1との結合を確認した後、それぞれの因子に関する既知の報告から有望と思われる5種の転写因子に絞り込んだ。これらの因子がProx1の下流遺伝子の発現に与える効果を検討するため、アデノウィルスによるProxlのHUVECにおける発現系およびHDLECにおける発現系を用いることにし、それぞれの転写因子をアデノウィルスにより発現できるように遺伝子のクローニングを行った。解析した因子の中で、Ets family転写因子であるEts-1およびEts-2がProx1により誘導されるリンパ管内皮特異的下流遺伝子であるVEGFR3(血管内皮増殖因子ブァミリーの一種であるVEGF-Cの受容体)の発現をさらに充進させた。それを裏付けるようにProxlおよびEts-1を共発現させたHUVECにおいてVEGF-Cへの走化性が充進した。また、Prox1およびEts-1を共発現させたHUVECにおいて増殖効果を検討したところ、Prox1によって誘導される細胞増殖効果を抑制した。これを裏付けるようにProx1によって誘導されたCyclinElの発現もEts-1により抑制されていた。以上の結果から、Ets-1/2がリンパ管内皮細胞におけるProx1の転写共役因子として同定され、リンパ管新生を調節する因子である可能性が示唆された。
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