研究概要 |
1.西表島亜熱帯林3地点(原生林,老齢二次林,若齢二次林)に20×20mの調査プロットを設置し,毎月,ツルグレン法とピットフォール法により土壌動物を採取し,土壌動物の群集構造を明らかにした.また,動物の採取と同時にリターフォール量および林床堆積有機物量も回収し,それらの乾重量から3林分における有機物の分解速度を明らかにした.これらの結果,原生林において,有機物の分解速度が速く,腐食性大型土壌動物(特に,等脚類)の個体数が多いことが分かった.次に,有機物の分解は微生物と土壌動物の相互作用の結果であるので,1mmメッシュと4×5mmメッシュのリターバックを3林分に設置し,落葉分解に及ぼす大型土壌動物と微生物の影響を調べた.その結果,1mmメッシュのリターバック内の落葉の減少率は3林分間であまり差がない一方で,4×5mmメッシュのリターバック内の落葉の減少量は原生林において著しく大きかった.これらのことから,西表島の原生林における急速な有機物の分解は,豊富な腐食性大型土壌動物の影響を大きく受けていると考えられた. 2.琉球列島〜西日本の森林には,Brumoniscus属のワラジムシが優占的に生息している.本属の形態分類は極めて混乱しており,現在,日本産のBrumonisucus属は,各地に固有種が生息するとする説と,2種が広く分布する説とがある.特に,後者の説は2種ともコスモポリタン種であると指摘しているため,日本産のBrumonisucus属は外来種の可能性がある.そこで,琉球列島〜紀伊半島までのBrumonisucus属を対象に,分子系統樹を作製したところ,八重山諸島と宮古島以北で枝分かれをし,前者は島間および島内で遺伝的多様性が高い一方で,後者はほとんど遺伝的分化が認められなかった.この結果,形態に基づく2つの仮説とは異なり,八重山諸島のBrumonisucus属は固有性が高い一方で,宮古島以北のBrumonsucus属は比較的最近に分布を拡大したと考えられた.
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