本年度は、半権威主義体制における政治過程を抽出し理論化する準備として、(1)開発主義研究と政治体制研究を中心とする先行研究の整理、(2)政治過程を規律・制限する法律の研究、(3)経済政策関連資料の収集を行った。 その中でも本年度は、「半権威主義体制」における政治過程が、公式・非公式の制度による制約によって特徴づけられるという考えから、上記(2)を重視し、マレーシアにおける政治的権利を制限する憲法規定や法律を中心として、それらの立法過程と運用を研究した。その結果、これまでの政治体制研究や一部の開発主義研究の前提に反して、(1)自由を制限する法が政府、与野党、経済団体、NGOなどを含めた多様な主体間の協議の帰結としてしばしば成立すること、また、(2)前述のような立法過程の特徴から、政治的自由を制限する法が、経済政策決定過程への多様な主体の参加を保障する制度的基盤となっていることが明らかになった。この発見は、東南アジア学会、マレーシア研究会等で発表した。また、以上の発見に、学会・研究会でのフィードバックを反映させたものを投稿論文として準備した。 また、今年度は経済政策関連資料の収集を行った。特に、長期経済計画に関する国会議事録と新聞報道、予算策定過程に関する新聞報道とインタビューを行った。その中で、1970年代以降、マレーシアにおける経済政策決定過程に、企業家やNGOの利益が反映されるようになったことも明らかになった。
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