研究概要 |
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)積層板は,高強度・高剛性など優れた機械的特性を有し,かつ軽量であるため,航空機の1次構造材料に適用されるなど,今後は自動車や高速鉄道車両など,金属に替わる構造材料としての適用が期待されている.CFRP積層板は一般に疲労に強い材料として知られているが,10^7サイクルを超える超長寿命域における損傷成長挙動について十分な評価は未だなされておらず,構造材料としての長期信頼性が確立されていない現状にある.これまでの研究で,高サイクル疲労領域におけるCFRP積層板の損傷進展挙動は,従来と異なる破壊形態を示すことを明らかとした.しかし,従来と異なる損傷の進展挙動については,未だ定量的評価はなされていなかった,そこで,本研究では,高サイクル疲労領域における実験データを蓄積するとともに,高サイクル疲労領域におけるCFRP積層板の損傷をモデル化し,その進展挙動について定量的に評価を行うことを目的とした. まず,負荷応力レベルに依存したCFRP積層板の損傷形態の違いについて定量的に評価を行った.層内樹脂割れ(トランスバースクラック)を考慮した層間剥離進展について,単位長さ当たりの損傷進展に伴い解放されるエネルギを導出した.さらに,Paris則を応用して損傷進展速度と損傷進展に伴い解放されるエネルギの関係について,トランスバースクラック進展及び層間剥離進展のそれぞれを定量的に評価した.その結果,低エネルギレベル(低応力レベル)域では層間剥離が進展しやすく,高エネルギレベル(高応力レベル)域ではトランスバースクラックが進展しやすい結果を得た.この結果は,実験結果とよい一致を示した.また,破断応力の20%を最大応力に設定した疲労試験では,繰返し数3×10^8サイクルまで,損傷は観察されなかった.
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