研究概要 |
パルスレーザー堆積法により原子レベルで膜厚を制御した高品質アナターゼ型TiO_2薄膜の局在化の性質とその光励起伝導について系統的に調べた。Nbをドープし金属化したアナターゼ型TiO_2薄膜をLAO基板上に作製し、膜厚を50nmから7nmまで変化させたところ、膜厚が薄くなるにつれて抵抗率が上昇し、温度依存性は低温に向けて大きくなっていく絶縁体的振る舞いを示した。この温度依存性は丁度ρoclnTに良く合うので電子の干渉による局在化のために抵抗が大きくなっているものと考えられる。 TiO_2の価電子バンドから伝導バンド間のギャップエネルギーは約3.2eVである。このギャップエネルギー程度の光(紫外光)を薄膜に照射したときの抵抗変化を調べた。紫外光照射時と暗室下のホール効果測定の結果、紫外光照射によるキャリア密度の増加には膜厚依存が殆どなく、膜厚が薄い絶縁体的な薄膜は紫外光照射によって移動度が増加するために抵抗率の減少が厚膜に比べて大きくなることが分かった。これは電子干渉によって局在化していた状態から、光励起によってキャリアが増えたため非局在化して移動度が大きくなったと推測出来る。 ペロブスカイト基板上に高品質なアナターゼ型TiO_2が成長することから、逆に、TiO_2薄膜上へペロブスカイト薄膜の製膜を試みた。SrTiO_3,LaA1O_3薄膜を堆積させたところ、三次元的成長ではあるものの表面は綺麗な単結晶薄膜をエピタキシャル成長させることに成功した。
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