微生物燃料電池プロセスを高効率化するために、数種の微生物燃料電池を作成した。気体状の酸素が電極と直接反応できる空気正極微生物燃料電池が、最も高い電気産生活性を示した。このリアクターを用いて、電気産生微生物として知られているGeobacter sulfurreducens PCA株や、嫌気消化汚泥などを播種源とした複合微生物群集から、数ケ月以上、安定的に電気産生が行われる事を確認した。 次に、微生物による電気産生能力を適切に評価する方法の確立を行った。微生物が電子授受反応を行う負極(アノード)の表面積を小さくし、電子授受反応を行う生体触媒量を減らす事により、生物反応律速の条件を作り出す事が出来た。この条件における微生物と電極の電子授受反応速度を「生物量あたりの電極還元速度」として評価し、電気産生能力を比較した。G. sulfurreducens PCA株の電極還元速度は、固体状の鉄還元速度とほぼ同じ値を示した。これより、電極還元と固体鉄還元は、同じメカニズムで電子移動している事が示唆された。また、微生物燃料電池中で集積された電気産生微生物群集と、G. sulfurreducens PCA株を比較すると、複合微生物群集が二倍以上の電極還元速度を示す事が分かった。これは、複合系微生物群集の方が、高い電気産生能力を持つ事を示唆している。来年度以降は、この評価方法を用いて、より優秀な電気産生微生物の取得を目指す予定である。 電気産生微生物の持つ導電性のナノワイヤーを解析するため、電気産生微生物からの微繊維の精製、導電性AFMの基盤素材であるHOPGへの吸着、電圧印加の方法の検討などを行った。その結果、共生菌のPelotomaculum thermopropionicum SI株の鞭毛が導電性を持つ可能性がある事が分かった。
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