微生物燃料電池プロセスの高効率化に関する研究として、空気正極微生物燃料電池システムを用いて研究を行った。モデル電気産生菌として知られるGeobacter sulfurreducens PCA株と、複合微生物群衆による電気産生活性の比較を、『負極における微生物反応律速条件下での、菌体量当たりの電極還元速度』という指標を用いて行った。その結果、PCA株では、178μmol g-protein-1 min-1であったが、酢酸を基質として同じ条件下で集積した複合微生物群衆は、1006μmol g-protein-1 min-1であった。これより、空気正極微生物燃料電池では、複合微生物群衆の方が、単離された電気産生菌よりも、6倍近く電気産生活性が高い事が分かった。この微生物群衆構造を解析したところ、60%以上がGeobacteraceaeに属した。この微生物群衆には、非常に高い電気産生能力を有する菌株が存在すると考えられる。 微生物燃料電池による廃棄バイオマス処理の可能性について調べるため、下水処理場の実排水サンプルを用いた電気産生試験を行った。廃水処理プラントの一次処理槽の上清を、空気正極微生物燃料電池に前処理無しで直接添加した。その結果、13日のラグタイムの後、電流産生が見られた。約一週間0.3mA(0.22V)の電流産生が見られ、その後電流値が減少した。再度、実廃水サンプルと入れ替えると電流産生は回復した。これより、約一週間で廃水中の微生物利用可能な有機物は完全に分解されたと考えられる。150日間の連続運転後の電気産生活性は、負極の開回路電位は-250mV vs SHE、限界電流密度は、1430mA/m^2、電力密度は13mW/m^2であった。今後、この廃水処理によって、有害化学物質の除去が行われたかを解析する予定である。最終的には、より高効率の微生物燃料電池システムを適用し、速い処理速度と、高いエネルギー回収率を示す廃水処理システムを開発する。
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