【研究実績概要】 細胞実験:はじめに生体内の腫瘍環境を考慮し、通常酸素分圧、低酸素分圧下での腫瘍細胞(DLD-1)の培養系を構築し、細胞増殖試験を行った。その結果、T3は通常酸素分圧下よりも、低酸素分圧下でDLD-1の増殖を抑制した。さらにこの効果はT3濃度依存的であった。次に、ヘキスト染色によりクロマチン凝集を伴うアポトーシスを調べた結果、T3を高濃度に処理した場合、クロマチンの凝集、アポトーシス小体の出現がみられ、特に48時間処理、低酸素培養条件で顕著な効果が認められた。作用機構を明らかにするために、遺伝子・タンパク質発現変動を解析し、T3は細胞周期停止タンパク質であるp21やp27の遺伝子発現を増加させるとともに、アポトーシス誘導に関わるカスパーゼ3とカスパーゼ9の遺伝子発現の増加をもたらすっことを見出した。 動物実験:DLD-1をヌードマウス背部皮下に注入し腫瘍を形成させたマウスに高純度米糠T3を経口投与し、腫瘍の増殖や、遺伝子・タンパク質発現に与える影響を調べた結果、T3経口投与により、腫瘍の体積と重量が有意に抑制された。このとき、体重に有意な変化はみられなかった。この腫瘍部位を解析した結果、腫瘍部位にT3が移行し、細胞培養試験の結果と同様、p21、p27、カスパーゼ3、カスパーゼ9の遺伝子発現の増加を認めた。血管新生促進因子であるVEGFやIL-8について、変化はみられなかった。さらに組織切片作製により、血管内皮細胞の特異的マーカーであるCD31/PECAM-1で組織を染色したところ、T3の強力な血管新生抑制を明らかにした。
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