落水された水田土壌中でのメタン生成古細菌群の生態および、湛水条件下の水田土壌中で嫌気的にメタンを酸化する嫌気的メタン酸化古細菌の生態を解明することを目的とした。 1.土壌微細構造中でのメタン生成古細菌の存在部位の解明:昨年度の結果より、土壌中でいったん増殖したメタン生成古細菌は落水された土壌中でも、微小な土壌団粒中に生息していることが推察された。本年度は落水処理が土壌中のメタン生成古細菌の群集構造の形成にどのような影響を及ぼすのかを調査した。メタン生成古細菌数が極めて低い畑土壌を用いて、常時湛水を保つ条件(処理1)および湛水と落水を繰り返す条件(処理2)を設定し、室内培養実験を行った。メタン生成古細菌の16S rDNAを対象としたDGGE解析およびMPN法による菌数の測定の結果、処理1では、培養2ヶ月までにDGGEバッドが増加し、菌数も増加することが明らかになった。一方で処理2では、DGGEバンドパターンの変化は処理1に比べると小さく、菌数も増加しなかった。湛水され還元的な状態がどの程度継続されるかが、土壌中でのメタン生成古細菌の増殖、群集構造の形成に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。 2.水田下層土においてメタン生成および嫌気的メタン酸化に関与する古細菌群の解明:メタン生成古細菌と硫酸還元菌による嫌気的メタン酸化の可能性について明らかにするために、水田土壌から分離したメタン生成古細菌Methanobacterium sp.AH1株と硫酸還元菌Desulfovibrio sp.A1株を供試菌株とした培養実験を行った。AH1株、A1株、AH1株とA1株の共生系の3条件を設定し、気相にメタン(10%)と窒素、二酸化炭素、培地に酢酸ナトリウムを含む条件で嫌気的に培養した。しかし、どの条件においても有意にメタンが減少せず、嫌気的メタン酸化反応が起こっていることを確認できなかった。
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