東アジア海域世界における相互交渉・認識の実態を明らかにずることを第一の研究目的をとし、18世紀、中国で翻訳体制が整っていないとされた蘇禄(スールー)から、中国に国書が届けられた場合、どのような問題が生じたのか、またそれらはどのような経緯があると説明されていたのか、漢文に翻訳された国書にはどのような文言が用いられていたのかを具体的に明らかにするとともに、もともと漢文の国書を中国にもたらしていた琉球の場合の一部を取り上げて、そうでない蘇禄・南掌の国書のなかの文言との共通点や差異などに着目しながら比較を行った。その研究成果は、(1)2007年度史学会大会(東洋史部会:11月18日)で「清代中国にもたらされた蘇禄の国書」として発表し、(2)「雍正年間に中国へもたらされた国書-蘇禄、南掌-」『アジア地域文化研究』第4号に報告した。 また、東アジアと東南アジアのあいだの交渉が可能となった歴史的経緯や背景をより広い視野のなかで明らかにするため、その基礎調査として2007年5月には中国福建省泉州にある海外交通史博物館・イスラーム関連の遺跡・天后宮・開元寺や慶門などをおとずれ、中国で行われている交渉史や航海安全の信仰に関わる文献収集とフィールドワークを重点的に行った。同年9月には東アジアのイスラームに関する現状理解と比較検討を行うため、そして中国教育学会歴史教学専業委員会の大会に参加するため、寧夏回族自治区を詰問した。
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