研究概要 |
量子鍵配送フロトコルは,様々な暗号技術で必要な秘密鍵を送受信者間で共有するためのプロトコルである.その安全性は従来の公開鍵暗号方式における計算困難性に基づいたものとは異なり,量子力学の原理によって保障される. 量子鍵配送プロトコルでは,通信媒体として用いる単一光子の伝送速度(一秒間に伝送できる単一光子の数)が低いため,秘密鍵の伝送速度(一秒間に伝送できる秘密鍵のビット数)が低いという欠点がある.量子鍵配送プロトコルでは,単一光子の伝送に加え,誤り訂正や秘密増幅で必要な情報を通常の古典的な通信路で伝送する.単一光子の伝送速度に比べると,誤り訂正や秘密増幅に必要な古典情報の伝送速度は十分に高いので,システムを多少複雑にしても,プロトコルの秘密鍵の伝送速度を上げることができる.本研究では,鍵共有のレートが高い双方向の古典通信を用いた量子鍵配送プロトコルを提案する. 今年度の研究では,プロトコルの通信路推定と呼ばれる手順を改善するという課題に取り組んでいる.そして,新しい通信路推定法を提案し,従来の通信路推定法をプロトコルで使用した場合に比べ,提案法を使用した方が高い効率を実現できることを明らかにしている.
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