高温高圧の条件のもと、サンプルを一定のひずみ速度で変形させる装置は、主にアメリカやヨーロッパで開発されていて、日本は、現在までのところ非常に乏しい状況にある。そこで、今回新しくDeformation Cubic Anvil Pressという装置を導入し、茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構へ搬入した。これによって高温高圧下での塑性変形実験のその場観察ができるようになる。ひずみ速度はX線のイメージから読み取り、応力はX線回折線から読み取るd値のひずみ量から計算によって求める。最初は、X線を用いずに、オフラインにて予備実験を繰り返し、新しい装置のセットアップを行った。その後、X線を用いて、鉄オリビンの変形実験を行った。今後、多くのマントル鉱物の変形実験を行い、マントルの変形特性やさらには深発地震のメカニズムなどが解明されることが期待される。地震波速度の観測から上部マントルは異方的な構造を持つことが明らかにされており、それは構成鉱物であるオリビンが塑性変形によりある結晶軸をある方向に揃えるためだと考えられている。また、それは対流の方向と関連性があるとされ、マントル対流シミュレーション等でもさかんに議論されている。温度や水の量、応力が変化すると、結晶軸のそろう向きが変化することがこれまでの実験により明らかにされてきたが、パターンが変化する具体的な条件は正確に決定されていない。そこで、温度・圧力・含水量・応力を制御した条件下において、オリビンをある方向にせん断変形させ、どのような配向を示すかを実験的に調べた。さらに、一度変形を加えたサンプルを回収し、さらに変形の向きを変えて再度変形させるという実験を行い、変形履歴による配向パターンの違いも調べた。これらの実験、解析はYale大学への滞在期間中に行った。
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