研究概要 |
発酵パターンに及ぼす基質の影響を検討した結果,水素回収が可能な基質として従来検討されてきた炭水化物に加えてグリセロールからも水素の回収が期待できることが明らかとなった。また,グリセロールを基質として使用した場合には,水素の他に有価資源として1,3-プロパンジオールを高い収率で生産することができることを明らかにした(水環境学会誌に掲載)。また,基質濃度と発酵パターンとの関係を検討した結果,エタノールの収率は基質濃度を増大させた時に向上する傾向があることが観察された。この時水素の収率とエタノールの収率の間には負の相関が見られた。この知見については,今後投稿する論文の中で報告する予定である。 分子生物学的手法を用いた微生物の解析を中温および高温培養系で行い,発酵パターンと微生物叢との関係について検討を行った。中温培養系では,種々の細菌群を使用した回分実験から,発酵パターンは植種源により異なることが明らかとなった。それらの培養系の発酵パターンは大きくの2つに分けられた。つまり,植種源の選択が発酵パターンの制御には大きな影響を及ぼすことを示した。微生物叢をPCR-DGGE法により解析したところ,エタノール発酵パターンにおいて水素生成ポテンシャルが大きな系からはClostridium pasteutrianumに近縁な細菌が観察された(廃棄物学会誌に掲載)。高温培養系では水素収率の高い微生物系を構築し,微生物解析を行った。PCR-DGGE法,リアルタイムPCR法およびクローニング法による解析の結果,Thermoanaerobacterium属細菌に近縁な細菌が水素生成には重要であることがあきらかとなった。また,植種源による影響を検討した結果,植種源は高温水素発酵特性を決定するパラメータの1つであるが示唆された(生物工学会誌に掲載)。
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