研究概要 |
本年度の計画は,「最新の結果を理論的に整理する.特に2つの特異性を持つ代表的な確率過程モデルの理論的な特徴と限界を明らかにする.その際に気づいた問題点があり,改善できるようであればその都度,成果にしていく.」であった. 目的に沿って,まず裾の厚い特異性を持つとして近年保険やリスク管理において注目されている,独立定常増分性をもつ確率過程(レヴィ過程)による連続時間モデルを研究した.具体的には2次元レヴィ過程によって構成される確率微分方程式の解が作る過程(一般化オルンシュタイン・ウーレンベッタ過程)を1次元から多次元モデルへと拡張した.近年ファイナンスや保険等の分野において多次元のデータが多く取り扱われていることを考えると,応用上非常に重要で意義がある.また一般化オルンシュタイン・ウーレンベック過程は自己系列の依存関係が弱いモデルであることが知られている.そこで確率微分程式を構成するレヴィ過程のひとつをフラクショナルブラウン運動という強い自己相関関係をもつ過程で置き換えることで,強い依存関係を持つ一般化フラクショナルオルンシュタインウーレンベック過程を考えた.ファイナンスや金融データではデーターのボラティリティ過程が強い自己相関やジャンプを持つことが経験的に知られており,そういった特異性を持つデータへの応用が期待できる.以上から本年度の計画は滞りなく実行できたと言えよう. また研究計画で記載したように,海外でのコンファレンスやセミナーに参加して著名な研究者と積極的に交流を計り,研究上の意見交換を求めた.そのおかげで来年度,海外の著名な研究所で研究を行うことが決まり,また海外での研究集会にも参加が決まった.現在共同研究も進行中である.
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