イオン液体はイオンのみからなる液体であり、難燃性、難揮発性、高イオン密度などの特徴的な性質を持つことから、従来の揮発性の有機溶媒とはまったく異なる新規な溶媒として注目を集めている。申請者はアミノ酸をアニオンに有するアミノ酸イオン液体に注目した。アミノ酸イオン液体は天然由来であることから低毒性であることが期待されるだけではなく、アミノ酸の側鎖構造に様々な機能席を導入することが可能であり、また従来のアニオンとはイオン液体を形成しづらかったカチオンと組み合わせることで物性の良好なイオン液体を形成することも報告している。本研究ではアミノ酸イオン液体の構造と物性の相関を明らかにするとともに、目的用途に応じた機能を持つイオン液体の設計指針の確立を目指している。 本年度は、特にイオン間の相互作用に注目し、イオン液体の物性改善を試みた。異種アミノ酸イオン液体を混合することにより、アニオン間の相互作用を介して極性などの物理化学的性質が非線形に変化することを示し、なかでも、アスパラギン酸([Asp])とリジン([Lys])のテトラブチルホスホニウム([P_<4444>])塩を混合することにより粘性をあげることなく、極性のみを向上させられることに成功した。こうした挙動を示した因子についてラマンスペクトル測定により考察を行い、アミノ酸イオン液体単体中でのアミノ酸のイオン状態と混合物中でのアニオンの状態が異なっており、混合によりフリーなイオンが増加したために極性が向上したことが示唆された。また、[P_<4444>][amino acid]と異なるアニオンを有する低粘性なイオン液体を等モル量で混合することにより、イオン液体がゲル化することを見出した。これまでにイオン液体のみからなるゲルの報告はなく、新規な材料として注目できる。また、このゲルは比較的高いイオン伝導度(10^<-3>Scm^<-1>程度)を有しており、電気化学の分野への応用も期待される。
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