研究課題
本研究の目的は、星団も銀河もN体で表現したシミュレーションを行い、銀河系の中心部で見つかっている様々な構造の起源を明らかにすることである。そして、このような計算は星団の進化を正しく得るために必要不可欠である。しかし、従来の計算方法では時間がかかりすぎるため、新しい計算方法(BRIDGE)を開発した。これは、高精度が必要な星団のみをダイレクト法で解き、粒子数が多いが精度はそれほど高くなくてもよい銀河は近似アルゴリズムであるツリー法を使う方法である。そうすることによって、星団に必要な精度を保ちつつ全体を高速に計算できる。BRIDGEによって計算時間は大幅に縮小され、世界で初めて、銀河中での星団の進化を星団・銀河共にN体で計算することに成功した。昨年度は、シンプルなN体計算のみであったが、今年度は、星団中の星の合体から中間質量ブラックホールの形成を取り入れ、銀河中心部での星団の進化を追った。その結果、星団の内部で星の暴走的合体が起き、中間質量ブラックホールが形成されると、星団によってある程度銀河中心付近まで運ばれた星が、そこから先は、中間質量ブラックホールとの平均運動共鳴によって銀河中心へと運ばれることがわかった。これは、今まで考えられていた、星団にバウンドした星が運ばれるというメカニズムとは異なる、新しいメカニズムである。このメカニズムによって、S-starと呼ばれる、銀河中心ブラックホールから数100AUのところにある星の形成メカニズムが説明できるかもしれない。
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New Astronomy 14
ページ: 369-378
Astrophysical Journal 686
ページ: 1082-1093