研究概要 |
本研究の目的は、ウズベキスタンにおける個別の地縁共同体(マハッラ)を題材に、コミュニティの内部構造に立脚した視点から、開発政策を検討することである。具体的には、社会ネットワーク分析(Social Network Analysis)手法を用いて、調査地のコミュニティにおける社会ネットワークの重層構造を、図示的、定量的に析出した上で、シミュレーション分析によって具体的な政策オプションを提示することなどを目指している。 ここで対象となる社会ネットワークとは、血縁、隣人、職場の同僚、級友、友人などの接点に基づく、地域に根付いた人的ネットワークである。 本年度は、現地において実施したインタビュー調査やこれまでに収集した基礎データに基づき、調査地のコミュニティのネットワーク的な特徴を検証した。調査地に見られる特定の種類のネットワークに、高いクラスター係数、ハブの存在、スケール・フリーの性格などを見出したが、これらの観点は、今後、調査地のネットワーク・モデルを検討する上で、キーとなることが期待される。また、こうした知見を部分的に取り込むことで、本年度は、論文"Traditions and the Informal Economy in Uzbekistan : A Case Study of Gaps in the Andijan Region,"や、図書『慣習経済と市場・開発-ウズベキスタンの共同体にみる機能と構造』(東京大学出版会)を刊行した。ただし、より洗練された分析手法による解析は来年度以降の課題である。
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