有機ホスフィンは、反応剤、遷移金属錯体の配位子、高機能性有機材料として用いられ、有機化学において必要不可欠な化合物群である。有用な新規有機ホスフィンの合成を目的とし、1-アルキニルホスフィン誘導体に対する窒素求核剤の付加反応について検討を行った。その結果、炭酸セシウム触媒存在下1-アルキニルホスフィンスルフィドに対して種々のアミドを作用させると位置および立体選択的に付加反応が進行することを見いだした。この反応はE選択的に進行し、再結晶をすることにより容易にE体のみを単離することができる。またこの反応によって得られるホスフィンスルフィドはトリス(トリメチルシリル)シランを用いたラジカル還元反応によって容易に三価のホスフィンに変換することが可能である。 本反応は分子間反応だけでなく分子内反応にも適用可能である。分子内にアミド部位を有するアルキニルホスフィンスルフィドに炭酸セシウム触媒を作用させると速やかに環化反応が進行し、ピロリジン誘導体を収率よく得ることができた。 またこの反応における生成物の二重結合部分の不斉水素化も試みた。検討の結果、常圧の水素雰囲気下カチオン性イリジウム錯体および光学活性二座ホスフィン配位子を触媒として用いることによって目的とする不斉水素化が高収率かつ高選択的に進行することが明らかとなった。この反応によって得られる新規ホスフィンは、新たな光学活性二座配位子として有用であると考えられる。
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