物質の量子状態を情報担体とする量子計算は、超並列計算が可能で、古典計算機では計算不可能な問題を極めて効率的にで解くことができると考えられている。量子計算の実現のためには、物質の量子状態を正確かつ高速に制御、操作し、観測する技術の確立が必要不可欠である。本研究では、高速性、低消費電力性に優れる超伝導単一磁束量子(SFQ)回路による超伝導量子ビットの操作、制御回路の開発を行った。 超伝導量子ビットの効率的な制御を可能にする、オンチップマイクロ波発生回路の検討ならびに設計、試作を行った。提案回路は単一磁束量子リングオシレータ回路とオンチップバンドパスフィルタによって構成される。詳細なシミュレーションを行い、超伝導磁束量子ビットを駆動するのに十分なマイクロ波が、極めて正確な時間だけ照射できることを明らかにした。オンチップマイクロ波発生回路テスト回路を設計、試作した。テスト回路は同じチップ上のマイクロ波発生回路から3mm離れた場所にジョセブソン接合から成るマイクロ波検出回路を集積し、マイクロ波の照射時と非照射時の反応の差を見る方法でマイクロ波の発生を確認する。実験の結果、18〜27GHzのマイクロ波が任意の時間だけ発生できることを確認した。 オンチップマイクロ波発生回路を操作し、超伝導量子ビットへのマイクロ波の照射時間を制御するための制御回路の検討を行った。回路は単純なバイナリカウンタを用いて構成され、およそ50psの間隔でマイクロ波の照射時間を制御できる回路が実現できることを示した。
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