多細胞生物では、個々の細胞が互いに情報をやり取りして、1つの綱体として存在している。植物では、分化、発生、受精など、あらゆる生命現象における情報伝達で、受容体様キナーゼ(receptor-like kinase;RLK)が重要な働きをしている。そのため、RLKの機能解析は急務である。 RLKの機能解析を生化学的に行うためには、多量のタンパク質が必要となる。そこで、今年度は多量のRLKを得るため酵母を絹いた異種発現系の構築、および、その内、幾つかのRLKの機能解析を行った。 植物のRLKファミリーの中で約半数を占めるのが細胞外ドメインに、ロイシンリッチリピート(LRR)というモチーフを持つ、LRR-RLKである。そこで今回、LRR-RLKを中心に20種類以上のRLKの酵母での発現を検討した。その結果、13個のRLKの発現に成功した。 この中で、LRR-RLKの1つであるSR160とそのリガンドとして知られているシステミンの結合解析を行ったが、その結合は見られなかった。一方で、キチンの受容体として遺伝学的に同定されているが、キチンとの直接結合が不明であったCERK1がキチンと直接結合することを突き止めた。このことは、植物の病原菌に対する免疫応答を考える上で非常に重要な発見である。
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