研究概要 |
本年度は地球表層における放射性核種や核分裂生成物の移動・固定・遅延のメカニズムに関する素過程を解明することを目的とし,以下のとおり研究を実施した。 (1)高感度高分解能二次イオン質量分析計(SHRIMP)を用いたマイクロ〜サブマイクロ領域下での同位体分析法を微小なウラン鉱物希土類鉱物等に適用し,風化・変質作用によるウラン鉱物の溶出に伴う元素の移行挙動を同位体科学的に検証した。 (2)バゴンベウラン鉱床の原子炉部分から垂直方向への放射性核種や核分裂生成物の固定・遅延について検証し,原子炉の上部に存在する粘土層が放射性核種の拡散を防ぐために重要な役割を果たしていることを明らかにした。 (3)バゴンベウラン鉱床で発見されたジルコンに関してラマン分光分析,EPMA測定を行い,これらのジルコンが著しく損傷を受け,幅広い範囲でウランを含んでいることを確認した。これらのジルコンを用いて,SHRIMP測定におけるUを多量に含むジルコンの場合の分析法を確立した。 これらの結果を踏まえて本研究では来年度,(1)これまで行ってきたREE,U同位体分析に加え,希ガスの同位体を分析することにより,原子炉の作動条件に関するキャラクタリゼーションを行う,(2)オクロウラン鉱床の原子炉コア部から採取した試料中から見出された金属粒子に関してEPMA測定,SHRIMP測定を行うことにより,それらの金属粒子の形成過程を明らかにする,(3)原子炉周囲での放射性核種の移動・固定・遅延に関するモデルを構築する,ことを目指す。また局所同位体分析法の応用範囲の拡大を目指し,複数の鉱物について局所同位体分析法を確立することも進める。
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