研究概要 |
光周性の制御機構には、長日刺激によって脳内の視床下部内側基底部で2型脱ヨウ素酵素(DIO2)が発現誘導され、局所的に甲状腺ホルモンが活性化されることが重要である。しかしながら、光周性の分子機構の全容の解明には至っていない。我々は、光周性制御機構の全容を明らかにするためにニワトリDNAチップを用いた経時的かつ包括的な遺伝子発現解析によって、1日の長日刺激で発現誘導されるDIO2に先行して2遺伝子(EYA3,TSHB)、またDIO2と同じタイミングで経時的な発現変動を示す10遺伝子(2nd wave gene)を単離している。本研究では、上記に示した遺伝子群の発現のタイミングから光周性の分子機構を解明する事を目的とした。発現部位を部位ごとに分類したところ、2nd wave geneは視床下部内側基底部にEYA3,TSHBは、下垂体隆起葉に時刻依存的な発現がみられた。EYA3は転写共役因子であることから発現部位の異なる視床下部内側基底部に作用するとは考えられなかった。また、TSHBとヘテロダイマーを形成するαサブユニット(CGA)の発現が下垂体隆起葉に見られたことから、TSHBはTSHとなりDIO2などの転写調節を行っている可能性が考えられた。そこで、2nd wave geneの転写開始点を決定し、プロモーター領域のクローニングを行ったところ、各遺伝子に共通する転写調節配列CREを抽出する事ができた。また、TSH受容体を強制発現させた培養細胞株と2nd wave geneの転写調節領域を用いたルシフェラーゼアッセイにより、2nd wave geneの転写調節はTSHおよびCRE配列依存的であることが明らかになった。以上よりTSHがTSHR-CREを介して光周性の鍵遺伝子であるDIO2などの転写調節を行っている可能性を示唆する結果が得られた。
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