本研究では、近代日本においてプロジェクト・メソッドの研究に取り組んだ代表的機関として、東京帝国大学、奈良女子高等師範学校、東京女子高等師範学校の三つをとりあげ、それぞれの事例における研究の実態や水準、またその影響下に展開された実践の具体相や特質を明らかにすることを課題としている。平成20年度には以下のような調査・研究を行った。 (1)1910年代後半から1930年までに発行された教育雑誌記事に関する調査 (2)日本においてプロジェクト・メソッドに先駆的に注目した教育学者たちの研究経緯の解明 (3)プロジェクト・メソッドの紹介以後教育界がこれに向けた関心とその推移の解明 (4)奈良女子高等師範学校教授・森川正雄によるプロジェクト・メソッドの研究実態の解明(平成19年度に調査・研究をすすめた奈良女子高等師範学校教授・松涛泰巌による研究の影響) (5)奈良女子高等師範学校附属幼稚園におけるプロジェクト・メソッドの導入に関する考察 (6)東京女子高等師範学校の教授兼附属小学校主事を務めた藤井利誉、北沢種一の研究とその背景に関する調査 (7)東京女子高等師範学校附属小学校における教育研究体制と同校の教師による教育研究の実態に関する調査 以上の調査・研究に関して、(5)までの内容については、拙稿「森川正雄によるプロジェクト・メソッドの受容-『幼稚園の理論及実際』の原典解明を中心に-」および「日本におけるプロジェクト・メソッドの普及-1920年代の教育雑誌記事の分析を中心に-」にまとめて公表した。
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