本年度は、2回の海外現地調査を実施した。 V1.タイ王国バンコック市、ペッブリ市(2007年7月):調査地・収集ジャータカ文献の情報並びに調査・資料収集活動時の指針・方向性を明確にするため、タイ王国バンコック市に赴き、現地在住の諸研究者5名と協議を進めた。この協議を経て、同調査期間後半にペッブリ地域における仮調査を現地在住研究者等と共に実施し、写本の仮撮影、保存状況などの確認を行った。これらを踏まえ集約された意見は以下め二点である。 (1)『パンニャーサ・ジャータカ』を中心とする東南アジア撰述の仏教説話写本を調査・収集するにあたり、同時にアーニサンサ(anisa□sa)'と呼ばれる一群の積徳行に関わる釈義文献を調査・収集することで、より体系的な所在目録・データベースの作成が可能になること。 (2)資料収集活動地域について、本研究における当初の目的は北タイ地域中心であるが、現状を考え合わせるとバンコックから南西に約130キロに位置するペッブリ地域を中心にする方がより効率的な研究、調査・収集活動が実施できること。 2.ミャンマー連邦シャン州(チャイントン、カロー、ニャウンシュエ周辺)地域(2008年3月):シャン州地域は歴史的にみても北タイ地域と密接な関係にあり、同地域の仏教説話写本などの保存状況の現状把握は本研究課題において必要不可欠である。 その他、国内における東南アジア撰述仏教説話写本の所在状況確認調査を4回実施した。また『パンニャーサ・ジャータカ』に関わる国内の研究経過と業績を網羅した資料を作成した。 各調査終了後、これらの意見並びに資料的価値など、調査結果について国内先行研究者と討議を重ねた。その結果、次年度では当初の計画より上記1.の(1).(2).の点について修正を加え、研究を実施する。
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