研究概要 |
昨年度の調査結果を踏まえ、本年度は「1.中部タイ地域に所在する寺院の中で、トンブリ王朝期創建の寺院が所蔵する貝葉写本の所蔵形態にも注意を払う。2.'アーニサンサ:A^^-nisamsa'と呼ばれる一群の積徳行に関わる文献も可能な限り調査・収集する」という点に留意し、3回の現地調査を実施した。 実施期間は、2008年9月16日〜21日、11月4日〜12月22日、2009年3月2日〜30日であり、調査地は、タイ王国バンコック市トンブリ地区(バーンコークヤイ区)にあるWat Ratchasittharam寺院(ラーマ1世再建。アユタヤ最後のサンガ・ラージャを招聘。代々の王が瞑想を行った古刹。第2級王室寺院)並びにプラナコーン区にあるWat Thepthidaram寺院(ラーマ3世期創建の古寺。第3級王室寺院)である。特に、外国人としては初めてとなるWat Ratchasittharam寺院が所蔵する厖大な量の貝葉写本を調査できたことは有意義であった。 その所蔵の特徴として、次のような印象を得た。(1).4つの文献群('Abhidhamma'(論書類)、'Kacca^^-yana'(文法書類)、'Dhammapada'、'Vessantaraja^^-taka'各々に関する文献)が、他の所蔵されている文献に比較すると圧倒的にその分量が多い。(2).『パンニャーサ・ジャータカ』集成にみられる仏教説話数話並びに典拠不明(東南アジアで独自に創作されたと思われるもの)のジャータカ文献、'Maha^^-buddhaguna'や'A^^-nisamsa'に関する文献も数多く所蔵されていた。(3).瞑想で有名な寺院ということもあり、'Kammattha^^-na'に関する文献が特に大切に扱われている。 *他寺院調査との比較も必要であるが、部分ではなく寺院経蔵の全体像を見聞できる機会は貴重であった。今後、収集した1,000件を超えるカタログ情報の整理・研究に期待を寄せたい。
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