昨年度の調査結果を踏まえ、本年度は「1.第一級王室寺院が所蔵する東南アジアで独自に創作されたと思われるジャータカ文献や'Mahabuddhaguna'(偉大なる仏徳)、'Anisamsa'(功果:御利益)に関する文献もデジタル画像資料として調査・収集する。2.ペッブリー(Phetchaburi)地域の寺院の所蔵する写本について、調査・写真撮影作業を実施する」という点に留意し、タイ国において2回の現地調査を実施した。 実施期間・調査地は、(1)2009年8月20日~9月4日:バンコク郊外のWat Huakrabau並びにペッブリー地域のWat Yai Suwannaram、Wat Lad(他3ヶ寺)、(2)2010年2月5日~3月6日:バンコクの第一級王室寺院Wat Mahathat Yuwaratrangsarit(1788年にラーマ1世の命により結集が行なわれた場所であり、ラーマ5世の頃まで王族の遺体を安置する場所とされた名刹)である。 (1)については、アユタヤー時代後期(1600年代)に筆写された貝葉写本や'Mahabuddhaguna'に関係のある絵付き大型折本紙写本など、希少で価値の高い写本をデジタル画像資料として収集できたこと、(2)については、結集が行なわれた歴史的背景をもつ第一級王室寺院所蔵の貝葉写本全てを見る機会に恵まれたこと、並びにPannasa-jataka、Sivijaya-jataka、Vidagdhamukhamandana、'Mahabuddhaguna'や'Anisamsa'に関する文献など、稀覯文献と考えられるものも多数所蔵されており、それらをデジタル画像資料として収集できたことは大きな成果であった。 *今までの現地調査で得られた情報をもとに、収集した2000件を超えるカタログ情報の整理を行ないながら、現在、各寺院に所蔵されていた貝葉写本の所在目録、データベースを作成中である。
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