研究概要 |
目的:本研究の目的は、子どもが話し合い・学び合う授業を実現するための談話ルールの共有を図る熟練教師の実践知を明らかにすることである。松尾・丸野(2007)において、教師が共有を図っていた「ルールの種類」そして「実際の話し合いの文脈で意味づけながら示す」という熟練教師の働きかけの特徴を明らかにした。このように、これまでの研究では教師の視点から実践知の内実を明らかにしてきた。その一方で、児童の視点からの検討は欠如していた。すなわち、教師の働きかけを通じて、児童が何を学んでいるのかについて明らかにされていない。そこで、本年度の研究においては、教師の働きかけを通じて児童が学ぶ「談話ルールの意味(なぜ、そのルールが必要となるのか、その機能性と重要性)」について明らかにするため、調査を実施した。 調査・分析:小学校の1学級を対象に,第5学年時(前年度)の1学期から第6学年時(本年度)の1学期の終わりにかけて授業観察を行った。この学級の児童は学年進行による担任の変化に伴って、「教師が児童に知識や考えを発表させる」事が中心の授業(第5学年時)から「教師が支えながら児童に話し合わせる」事が中心の授業(第6学年時)への移行を体験しており、談話ルールの意味について意識化が求められる状況であった。また、第6学年時には児童に対する質問紙,およびインタビュー調査を実施した。各5時限分の国語授業における話し合いの過程を,質問紙やインタビュー調査の結果と関連付けて分析した。 結果:教師による言い換えや,精緻化を求める発問によって,自分たちの発言を中心に話し合いが展開し、話し合いの中で反省的思考を体験する中で、児童は「多様な意見を場に出すことの重要性」「他者の意見を聴く事の重要性」を実感する共に、これらの認識の妨げとなるような教師中心の授業を支えるルールを問題視し,自らのルールを変容させていた。
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