研究概要 |
□研究の背景 身体行為を正常に実行できることが、「自己意識」の成立につながっている可能性かおり、統合失調症はこの「身体化による自己意識」の障害であると解釈できる。特に行為における予測的な情報処理とその大脳半球機能差の障害が疑われている。近年の統合失調症は健常者との連続性を仮定できるという観点から、統合失調型パーソナリティの傾向の高い大学生を対象とした実験的課題により、自己身体行為の予測とそれに関わる半球機能差の違いを検討した。具体的には「視覚到達課題(研究1)」と音声刺激を用いた「言語性検出課題(研究2)」によって検討した。 ●研究1 ・まず健常大学生50名を対象にSchizotypal Traits Questionnaire(陽性統合失調型を測定する質問紙;Gregory et al.,2003)を用いて統合失調型パーソナリティの傾向を測定した。続いて,自己運動の予測精度をオリジナルに開発した実験課題(カーソルの見えないマウス装置を用いて,視覚到達課題を行う)により測定した。その結果,統合失調型パーソナリティの傾向が高い健常者は,自己運動の予測精度が落ちるという関係が見られた。この成果をConsciousness and Cognition誌に投稿し,受理された。 ●研究2 ・まず健常大学生50名を対象にSchizotypal Traits Questionnaire(陽性統合失調型を測定する質問紙;Gregory et al.,2003)を用いて統合失調型パーソナリティの傾向を測定した。音声言語刺激の検出に非典型的な大脳半球機能差が見られるか(優位手,優位耳の逆転など)を意味判断Go/No Go課題によって測定した。その結果,統合失調型パーソナリティの傾向が高い健常者では,一般的に見られる空間運動制御と意味判断における優位手が確認できず,非典型的な半球機能差を持つことが示された。この成果をBrain and Cognition誌に投稿し,受理された。
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