本年度は海外と日本でのG8での成果も含めた調査研究ならびにそれらの結果の分析を行うことで、Jubilee2000からMake Poverty Historyまでの重債務救済キャンペーンの基底となった、市民らによる宗教運動や公共圏でのさまざまな社会運動やフェスティバル的な文化と芸術の役割について調査分析し、規範をめぐる社会運動についての理論、そして同理論と民主主義理論との接合に向けたさらなる洗練化の双方に取り組み、NGOを中心とした市民社会諸力のみならず、NGOのように組織化されていない類縁集団(affinity group)が国際規範形成に与えた影響の実体を明らかにすることに成功した。この点は政治学・国際関係論分野では日本での研究がまだ僅少なことから、極めて重要であり意義深いものである。くわえて、海外でのフィールドワークの継続と市民らによるグローバルな「下からの」規範形成過程の場に引き続き参加することで知見を広げるとともに、理論と実践の紐帯を引き続き探った。 これらの地道なフィールドワークの継続によって得た知見をもとに、グローバル・デモクラシーの実体と国際関係論における規範形成の理論にかんする3年目までの研究成果の一部を、昨年度に引き続き、国内外での学会や国際会議にて公表した。具体的に国内ではそれぞれ日本平和学会と日本政治学会で報告を、また海外ではBISAで報告の機会を得た。 また、本年度も継続して国内外での会議や学会、省庁での各種研究会、市民活動の場で活発な意見交換を行うことで、グローバル市民社会にくわえて類縁集団を担い手としたDIY(Do It Yourself)的な規範変容的文化が重債務救済と規範変容に与えた影響の動態把握にも成功した。その成果の一部にっき、研究の意義に対する社会的評価を示すアウトリーチ活動として「アサヒ・アート・フェス」等の公開講演、各種インタビュー、そして『現代用語の基礎知識2010』の巻頭特集への寄稿など、本年度も多くの発表の場を与えられることで成果を広く江湖に問うことが出来た。
|