研究概要 |
近年の科学技術の進展に伴い,ロボットは人間の代わりに仕事をする存在として,産業分野のみならず,危険作業,災害救助,医療,家事など様々な場面での活躍が期待されている.この期待に答えるには,ロボットが自ら状況判断(自律制御)をし,他のロボットと協力(協調・分散制御)し,時々刻々と移り変わる環境に適応(実時間制御)することが望ましい.本研究では,これらの要件を満たす,「実時間自律分散型マルチエージェント環境」における有益な知識の発見を目的として,機械発見手法の研究に取り組む. 初年度は,四足ロボットAIBOによるシュート(ボールを蹴る)動作を題材として,ハードウェアの制御に直結した時系列データからの知識発見に取り組んだ.シュート動作はロボットのすべての関節角度列からなる時系列データとして表されており,数十次元の高次元探索空間を持つ.申請者は,ボールをより遠くに転がすシュート動作を有益な知識と定義づけて,それを効率的に発見するための「間引き」を提案した.間引きは探索木の枝刈りと同様の概念であり,探索中の試行(評価)回数を削減する手法である.まず,性能を評価するために,様々な数学的テスト関数を用いた実験を行い,間引きが一般の問題に対しても適用できることを確かめた.次に,理想的なアプリケーションとして,仮想環境上のロボットを用いた実験を行い,初期動作とは全く異なる優れたシュート動作を発見することができた.さらに,目的関数の近似モデルである代理関数を利用することで,間引きの効果を増幅させる手法を提案し,数学的テスト関数と実際のロボットを用いた実験によりその効果を示した.
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