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2008 年度 実績報告書

細胞質ダイニンが微小管上を「小股歩き」をする機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 07J09333
研究機関東京大学

研究代表者

島 知弘  東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)

キーワードモータータンパク質 / 二量体 / AAA+ファミリー / 生物物理学
研究概要

細胞質ダイニンは、モーター活性を担う重鎖が二量体を形成して働いている。昨年度、私は別々に精製した単量体重鎖2つを二量体化させることに成功し、これによって二つの重鎖間の制御の実態を研究することが可能になった。
本年度私は、まず一方の重鎖をATPと結合できずモーター活性のない、いわゆる「死んだ」変異体(P1T変異体)に代えたヘテロ二量体を作成した。P1T変異体はそれ自身では微小管から解離せず動かないはずであるが、このヘテロ二量体は1分子で微小管上を長距離運動した。この挙動はキネシンなどでは報告されておらず、ダイニン特有のものである。P1T変異体はATPと結合しないため、ATP加水分解に伴う力発生が起こらない。つまりこの結果は、細胞質ダイニンのプロセッシブな歩行には、片方の重鎖のATP加水分解過程の進行や力発生が不要であることを示している。一方の重鎖の力発生なしで二足歩行するという現象は、2つの重鎖が交互に力発生を繰り返して進むという従来型のモデルでは説明できないので、この野生型/P1Tヘテロ二量体ダイニンの運動様式を詳細かつ定量的に調べることで、分子モーターの新たな動作機構を発見することができるかもしれない。したがって今後は、光ピンセットやFIONAを用いて、野生型/P1Tヘテロ二量体ダイニンが微小管上をステップする様子を計測することで、野生型およびP1T変異体各重鎖のステップサイズ・Dwell time・力などを明らかにすることが必要とされる。
またP1T変異体はそれ自身では、微小管から解離しないにもかかわらず、野生型とのヘテロ二量体になるとプロセッシブに動くことができるということから、二つの重鎖の間に機械的な張力がかかっており、片方の重鎖がもう一方の重鎖を微小管から引き離すような仕組みが存在していることが示唆される。この機械的な張力の伝達部位としては、二つのダイニン重鎖が結合している尾部末端が最も可能性が高いと考えられたが、尾部末端に柔軟なリンカーを挿入し、尾部末端を介した張力が伝わらないよう設計した二量体組換えダイニンが、リンカーを挿入していないものと同様にプロセッシブに運動することが確認された。この結果は、ダイニン重鎖の尾部末端以外の領域に、機械的な張力を伝達できる程度の強い重鎖間相互作用を示す部位が存在することを示唆している。今後は、新たなダイニン重鎖相互作用部位を同定することによって、細胞質ダイニンのプロセッシブな運動を達成させている重鎖間の制御の実態を解明できるものと期待される。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Autonomous Loading. Transport. and Unloading of Specified Cargoes by Using DNA Hybridization and Biological Motor-Based Motility2008

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Hiyama, Takeshi Inoue, Tomohiro Shima, Yuki Moritani, Tatsuya Suda, Kazuo Sutoh
    • 雑誌名

      Small 4(4)

      ページ: 410-415

    • 査読あり
  • [学会発表] How does the dimeric cytoplasmic dynein processively walk on a microtubule?2009

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Shima, Naoki Numata, Takahide Kon, Reiko Okura, Motoshi Kava, Hideo Higuchi, Kazuo Sutoh
    • 学会等名
      Biophysical Society 53rd annual meeting
    • 発表場所
      The Boston Convention and Exhibition Center (Boston, MA, USA)
    • 年月日
      2009-03-03
  • [学会発表] Coordination of two heads of cytoplasmic dynein studied with herodimeric construct2008

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Shima, Takahide Kon, Reiko Okura, Kazuo Sutoh
    • 学会等名
      日本生物物理学会第46回年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      2008-12-03
  • [学会発表] Behavior of two heads of cytoplasmic dynein during its stepping2008

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Shima, Naoki Numata, Reiko Okura, Takahide Kon, Kazuo Sutoh
    • 学会等名
      Gordon Research Conference, Muscle and Molecular Motors
    • 発表場所
      コルビーソイヤーカレッジ(New London, NH, USA)
    • 年月日
      2008-06-30

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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