電極上にドナー、アクセプター分子を組織化させた有機光電変換デバイスでは、高い光電変換効率を達成させるにあたり、ドナー・アクセプター間の高効率電荷分離、電荷分離後生成した電子と正孔の電極への速やかな輸送、が重要である。したがって、分子構造、電極上の分子膜構造、光電気化学特性の相関の解明が求められる。そこで、電極上で、配位結合を利用したポルフィリン・フラーレンナノ配列を構築し、それらの相関を調べた。 ポルフィリン配列修飾電極は、既報の手法に基づき、ピリジル基とカルボキシル基を有するポルフィリン(ZnPyPacid)を酸化スズ電極上に単分子膜吸着させた後、電極上のポルフィリン末端に、Pdとの配位結合を介して、ピリジル基を2箇所有するポルフィリン(ZnPy2P)を逐次連結していくことで作製した。湿式三極系でIPCE値を測定すると、ポルフィリンを3層修飾した場合(FTO/SnO2/(ZnP)3)に最大値10%(λex=440nm)に達した。 次に、酸化スズ電極上にZnPyPacidとフラーレンカルボン酸(C60acid)を吸着させ、先と同様の手法でZnPy2Pを逐次連結させた。その後、亜鉛ポルフィリンに配位可能なピリジル基を有するフラーレン(PyC60)をポルフィリン配列間に取り込ませた(FTO/SnO2/C60acid+(ZnP)n+PyC60)。これらの電極のIPCE値を測定すると、FTO/SnO2/C60acid+(ZnP)5+PyC60電極で22%を達成し、ポルフィリン配列のみを修飾した電極と比較して光電変換効率が向上することがわかった。この光電変換効率の向上は、電極上で電子と正孔の輸送経路が形成されたことによると考えられる。
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