テラヘルツの光信号列を制御することを目的に、電気制御を用いない光の特性のみを利用した反射型の光変調素子を提案してきた。これまで、フタロシアニン系の色素分散高分子薄膜は近光通信波長領域にて良好な特性を示すことを明らかとしてきた。また、導波モードを利用した光変調素子に組み込むことで、数百ナノメートルの薄膜を用いても高い強度変化を示した。しかしながら導波モードの反射スペクトルは、モード形成する波長幅が広く、フェムト秒オーダーの制御パルスを用いても応答速度は1psの材料そのもの応答は得られなかった。テラヘルツ駆動できる多数チャンネル一括処理を行うためには、導波モード形成する波長幅制御と、斜め入射される時に生じるパルスの空間的な広がりがもたらす時間の広がりを改善する必要がある。 これらの問題を解決するために、昨年度は(1)クラッド層膜厚と導波モードの波長幅の関係の解明すること、(2)信号光が斜めに入射される際に生じる時間的な遅延を軽減するための制御光の照射タイミングの工夫を試みた。後者の方法として、高屈折率プリズムの導入、制御パルスのパルス整形、および制御光の遅延などである。導波モードの波長幅を制御する方法としては、クラッド層膜厚を増加させることで、導波モード波長幅は鋭くなり、計算上5nm、実測においても30nmまで狭まり波長幅制御ができた。また時間の広がりを制御するために、膜に対し制御光も信号光と同様の斜め入射し遅延を与えたところ、タイミングの広がりを軽減することに成功した。なお、(1)の波長幅とクラッド膜厚の関係を明らかとし波長分解能の制御法を確立した成果はApplied Physics Lettersで報告した。
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