研究概要 |
近年、医僚の高度化に伴い免疫力の低下した患者は増加しており、とりわけ、日和見感染症は懸念すべき問題となっている。又、安全性の高い抗真菌剤の開発は難題であり、さらに薬剤耐性問題の深刻さから作用機序を異にする抗真菌剤が切望されている。Argadinは環状ペプチド構造を有し、抗菌活性や細胞毒性を示さずかつ特異的にキチナーゼを阻害する。しかしながら、Argadinは経口吸収では活性を示さず、創薬の面で問題となっている。このような背景の元、申請者はArgadinの有する問題点(経口吸収では活性を示さない)をその誘導化から解決するのではなく、合理的な分子設計を用いた骨格転換によって解決できるのではないかと仮説を立てた。 以上より、申請者は、分子設計により得られた非天然型化合物を合成することで、キチナーゼ阻害活性を有する経口吸収が可能な新規マクロライドを創製できると着想した。 まず、標的化合物の合成を行った。即ち、既知の方法論を一部改良し、Erythromycin Aから二種類の糖を除去した(9S)-9-dihydroeryhtlonolide Aを合成した後、更に3工程の保護脱保護を経、(9S)-9-dihydro-9,11-O-isopropylideneerythronolide Aへと導いた。続いて、種々条件検討を行った結果、(9S)-9-dihydro-9,11-O-isopropylideneerythronolide Aに対して3,5,6,12位水酸基を無保護のまま、直接、アルキル化を行い、目的物である(9S)-9-dihydro-9,11-O-isopropylidene-3-O-propargyl erythronolide Aを得た。その後、イミダゾール部位とのStilleカップリング続く接触還元を行い、3位水酸基から所望の3つのメチレン鎖を介したイミダゾールユニットを合成した。保護基の脱着を経た後、9位水酸基を酸化し、酢酸条件に供することにより、分子内に6,9-enoletherを構築した。最後に、11位水酸基に芳香環をエステル結合を介し導入することで、標的化合物の全ての必要な官能基、置換基を揃えることができた。現在は、合成中間体も含め、様々なキチナーゼに対してアッセイ評価を行っているところである。
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