研究課題
前年度の研究によって、酵母プリオンSup35NMドメイン(Sup-NM)はアミロイド形成前に温度依存的にオリゴマーを形成し、それがアミロイド構造を決定する重要な要因であることを明らかにした。今年度は更にオリゴマーの役割や構造について掘り進める研究を行った。まず、Sup-NMの詳細なアミロイド形成速度の測定では、オリゴマーの存在する低温領域では核形成に複数分子の衝突が必要であるが、オリゴマーの存在しない高温領域ではSup-NM一分子の構造変化により核形成がなされていることが示唆された。また、両者のアミロイドは核形成後にはモノマーの付加によって重合が進み、この段階になると周囲の温度の変化には全く影響を受けなかった。つまり核形成の条件が後のアミロイド構造や特性、さらには酵母の表現型を決定する最重要要因であるといえる。更に蛍光色素ピレンで修飾したSup-NMを用いて、オリゴマーのコアと成る部分の特定を行った。ピレン修飾部位が、分子間で10Å以下の距離に接近すると、ピレンダイマー(エクシマー)が形成され、特殊な蛍光が発せられる。このエクシマー蛍光はオリゴマーの存在する低温領域のみで観察でき、中でも80〜120番目の残基で最も高い値を示した。低温条件で出来るアミロイドは1〜40番目の残基がコアになっていることが既に報告されており、オリゴマーはそれとは全く異なるコア領域を持っていることが示された。今年度の研究ではプリオン株や種の障壁の基盤となる多様凝集構造が出来る仕組みに迫ることが出来、今後の哺乳類のプリオン病やアミロイド病の理解の手助けとなる結果を得ることができた。また、多くのアミロイド病で問題視されているが、解析の進んでいないオリゴマー蛋白質の構造を一部解明出来たのは大きな前進であり、今後、より詳細な研究を進めていく。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Nephrology Dial Transplant 23(10)
ページ: 3247-55
The Biochemical Journal 416(2)
ページ: 307-15