研究課題
本研究の目的は、アフリカ都市零細商人の多面的な生計実践とその創造性を、路上商人と彼らを取りまく多様なアクターとの相互行為のあり方に着目して考察することを通して、路上商人のミクロな生計実践がいかにして当該社会の文化、経済、社会、政治の再生産・再構成に寄与しているのかを実証的に明らかにすることにある。平成20年度には、前年度に調査したタンザニア路上商人の暴動に関する研究成果を、切り口を変えて、日本アフリカ学会と日本文化人類学会において発表した。発表では、路上から商人を郊外の市場へと再配置しようとする行政側の施策がなぜ失敗したのかを、路上商人が商店主や消費者、警官・警備隊員などと取り結んでいる相互依存的・共生的な関係性を検討することで明らかにした。モラルエコノミーの国際シンポジウムの成果報告書にこの暴動に関する小論が掲載された。またアフリカのポピュラーカルチャーに関するシンポジウムを開催し、その企画運営を担当するとともに、路上商人の商実践にみられる騙しの技法について報告した。発表では、路上商人の実践知(狡知)に依拠した騙しの技法とはいかなる条件で成立するものかを検討することを通して、ネオ・リベラリズムの進展とともに自己規律化・自己責任が過度に問われるようになった現代の社会において、嘘や騙しのもつ積極的な側面を考察した。また京都人類学研究会において、日本の若者が抱える問題を研究している社会学者と議論の場を持った。現在、本年度に掲載されたタンザニアのポピュラー音楽に関する論文を、英訳し、東アフリカ論文集を出版予定である。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件)
Comparative Perspectives on Moral Economy : Africa and Southeast Asia, Proceedings on 3rd International Conference
ページ: 169-180