平成22年度上半期は学術振興会特別研究員の成果として著書を出版するために、博士論文を加筆修正し、日本学術振興会の学術出版助成に応募した。本書は、タンザニアの都市零細商人マチンガがグローバルな資本主義経済の論理や流動的で半匿名的な都市社会の人間関係に適合しながら、いかにして市場経済のただなかにおいて互いの生を保証しあう独自の商慣行と共同性を築き・変容させていくのかを明らかにしたものである。 平成22年度下半期は、タンザニアのダルエスサラーム大学から出版予定の論文集に論文を投稿した。この論文は前年度に提出したモラル・エコノミー国際会議のプロシーディングを加筆・修正したものであり、従来、国家(都市権力)と弱者(被抑圧者)との二項対立図式から分析されてきた路上商人による抵抗を、路上という社会空間における多様な人間関係から再考したものである。平成23年2月中旬から3月下旬までタンザニアに渡航し、東アフリカ関税同盟再結成後のケニア、ウガンダ、ルワンダとの国境をまたぐ交易活動について参与観察と聞き取り調査をおこなった。この調査結果については、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科紀要African Study Monographに投稿準備中である。
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