本研究はフォトクロミック分子の異性化による幾何構造変化を利用したナノアクチュエーターの構築を目指し、一分子の幾何構造変化がマクロな材料変形へと繋げる上での必要条件を解明するものである。平成20年度は結晶内における異分子が材料変形へ与える影響を調べることを目的とし、任意の組成比の結晶を作製できる混晶系の開発とその光誘起形状変化の観測に着手した。 平成19年度に合成した分子を用いて二成分結晶の作製を検討した結果、再結晶溶液中で化合物の配合比を変化させることによって任意の組成比の混晶を得た。様々な組成比の混晶の融点を測定するとこの二成分系は全率固溶体型の相図を示した。 得られた混晶を昇華させることによって、厚みがナノメートルオーダーの結晶を得た。吸収スペクトルの測定よりこの結晶は二成分結晶であると判明した。 昇華法により作製した厚みがナノメートルオーダーの結晶、および、再結晶法により作製した厚みがマイクロメートルオーダーの結晶について光照射による形状変化を検討したところ、両者とも変形を示すことが判明したが、その形態は異なっていた。偏光顕微鏡を用いて結晶内での分子の配向を検討することにより、光照射により生じる材料の変位方向は等しいと判明した。観測された変形の違いは結晶の厚みに由来する(厚い結晶は表面だけが光反応するが、薄い結晶は結晶全体が反応する)ものであると推測される。混晶の組成比と結晶の形状変化の関連は今後研究していく。
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