研究概要 |
原子気体BECにおけるブラックホール時空との類推に関する研究に関して、共同研究者と議論を行い、その成果を国際会議(International Symposium on Quantum Fluids and Solids)および学術誌(J. Low Temp. Phys. 150, 624-629(2008))で発表した。この研究は、原子気体BECの実験で十分検証可能である。それが可能になれば、原子気体BECでブラックホールの輻射の検証をする初めての実験となる。この研究は、物性物理だけでなく宇宙、素粒子物理にも関心が及んでいるため重要な研究であり、次年度も継続して研究を行う。 ブージャムを持つ2成分BECの研究では、ブージャムの動的性質に関連して、2成分BECにおける渦の基本的なモードであるケルビン波の研究を行った。そこでは、ブージャムをともなうケルビン波など、いくつか新奇なモードが存在することがわかった。その成果は、国際会議(International Symposium on Physics of New Quantum Phases in Superclean Materialsおよび2nd International Workshop on Photosynthetic Antennae and Coherent Phenomena)で発表した。次年度にはさらに発展させて論文を執筆予定である。 加えて、BECにおけるDonnelly-Graberson(DG)不安定性の研究を行った。我々は、BECにおける渦状態を微視的に解析することにより、DG不安定性がランダウ不安定性によって引き起こされ、絶対零度でも起こることを初めて予言した。超流動ヘリウムでは絶対零度でDG不安定性が起きないと考えられていたが、我々の結果はそれを覆すものである。最近研究が活発である超流動ヘリウムの量子乱流の分野において、絶対零度での散逸の存在を示唆する実験が報告され注目を集めているが、我々の結論はその現象に関連してくることがわかった。これらの成果は日本物理学会年次大会および国際会議(Symposium on Quantum Phenomena and Devices at Low Temperatures)で発表し、現在論文を執筆中である。
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